『傲慢と善良』は、現代の人間関係や社会のあり方を鋭く描いた辻村深月さんの小説です。
この物語は、傲慢と善良という対照的な性格を持つ2人を通して、人間の内面や行動の動機を深く掘り下げています。
物語の中では、自己中心的な態度や他者を軽視する傲慢さと、他人に対する思いやりや正直さを持つ善良さが対比され、その結果として生じる人間関係の変化が描かれています。
この記事では、まず『傲慢と善良』の簡単なあらすじを紹介し、その後に物語の背後にあるテーマやメッセージを考察していきます。
ぜひ最後までお付き合いください。
『傲慢と善良』のあらすじ
辻村深月の『傲慢と善良』は、現代社会の恋愛と結婚をテーマにした物語です。物語の主な語り手は、西澤架、39歳の男性です。
この物語は、恋愛小説でありながらも、自己の内面を見つめさせられる深い内容が描かれています。以下に、この作品についてのあらすじをまとめました。
東京育ちの架は恋愛経験が豊富で、女友達も多いが、結婚願望は強くなく、独身のまま30代後半を迎えました。しかし、周囲の友人や元彼女の結婚や出産を目の当たりにするうち、一人で生きていくことに不安を感じるようになります。そんな中、婚活アプリで出会った坂庭真実と交際を始めます。
真実は、架の友人たちからも「いい子」と評価される女性です。しかし、架は結婚を二年以上先延ばしにしていました。その理由を既婚の女友達に指摘された矢先、真実がストーカーに自室に侵入されたと告げます。真実曰く、ストーカーは地元で働いていた時に関係を断った相手だといいます。
このストーカー騒動がきっかけで、架は結婚の意思を固め、結婚式場の予約まで進めますが、ある日突然、真実は架の前から姿を消します。架は真実の失踪の理由を探るために、真実が暮らしていた地元の群馬県前橋市へ向かいます。ここからは、架が真実の関係者に聞き込みをして回る展開になりますが、このあたりから、真実の本当の姿が徐々に明らかになっていきます。
真実の両親や、真実が利用していた結婚相談所の代表、真実が交際を断った二人の男性など、多くの関係者に話を聞くうちに、架は真実の「善良ゆえの傲慢さ」に気づかされます。真実は、自分の意思で何も選ばず、周囲の期待に応えて生きてきた結果、結婚相手を選ぶ際に「ピンとこない」と感じるようになっていました。
後半では、真実の視点が描かれます。真実が失踪した理由が明かされ、その後の生活が描かれます。真実は、自分の意思で様々な経験を積み、自分自身を見つめ直していきます。そして、自分の意思の欠片を拾い集めるような日々を過ごす中で、少しずつ自分を変えていきます。
最後に再会した二人がどのような未来を歩むのかは、本編で確かめていただきたいと思います。
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『傲慢と善良』の意味
傲慢とは?!
「傲慢(ごうまん)」という言葉は、自分が他の人よりも優れていると思って、他の人の意見や気持ちを大事にしない態度や行動のことです。たとえば、自分の意見がいつも正しいと思って他の人の意見を無視する人のことを「傲慢」と言います。
善良とは?!
「善良(ぜんりょう)」という言葉は、心が優しくて正しいことをしようとする態度や性格のことを指します。つまり、他の人に対して親切で、正直で、思いやりのある行動をする人を「善良」と言います。
このように、傲慢は自分中心の態度であり、他の人の意見や気持ちを軽視します。一方で、善良は他の人を思いやり、正しいことをしようとする姿勢を持っています。
『傲慢と善良』の考察
『傲慢と善良』は、恋愛や結婚をテーマにした辻村深月さんの作品で、登場人物の気持ちや行動を通して、自分の意志と社会の期待との間で揺れる様子が描かれています。以下に、この作品についての考察をまとめました。
物語のテーマと登場人物の対比
物語の中心人物は、西澤架と坂庭真実の二人です。
架は東京で育った男性で、恋愛経験が豊富ですが、結婚にはあまり興味がありません。
一方、真実は地方で育った女性で、親や社会の期待に応えて生きてきた「いい子」です。
この二人の対比は、現代社会で自分の意志を持つことの難しさを表しています。架は「選ぶ側」として結婚を先延ばしにし、真実は「選ばれる側」として自分の意志を持たずに生きてきました。
善良さと傲慢さの対立
物語の中で、真実の善良さが次第に傲慢さとして表れてきます。
真実は周りの期待に応え続けることで自分を大切に思う気持ちが強くなり、結婚相手を選ぶときに「この人じゃない」と感じるようになります。これは、彼女が自分の意志で何も選ばなかった結果、いざ自分で選ぶときにうまく決断できないという問題を示しています。
辻村深月さんは「善良であること」と「自己愛の強さ」が両立する現代の問題をうまく描いているなぁと感じました。
自分の意志と社会の期待の狭間で
『傲慢と善良』では、自分の意志とは何か、どこまでが社会の期待なのかを問いかけていると思います。
架と真実の関係を通じて、「本当に自分の意志で選んでいるのか?」という疑問が浮かび上がります。
真実が失踪した後の生活では、彼女が自分の意志を探り、自分を理解する過程が描かれます。これは、真実が社会の圧力に対して自分をどう動かすかを理解する過程でもあります。
現代社会における選択の難しさ
物語の中で印象的だったのは、「本当に自分の意志で選んでいる人がどれくらいいるのか?」という問いかけです。
真実を責めることができる人がどれほどいるのか?自分の選択が本当に自分の意志によるものなのか?社会の影響を受けた結果なのか?を考えさせられます。
この問いは、私たちがどのように生きるべきかを考える上で非常に重要だと感じました。
エンターテインメント性と深い思索
『傲慢と善良』は、恋愛小説として楽しめるだけでなく、真美の失踪の理由を探るというエンターテインメント的な心理を深く掘り下げた作品です。
辻村深月さんは、登場人物の行動の背後にある心理を細かく描写し、普遍的な人間心理を浮かび上がらせます。この高い描写力により、私は自分自身と登場人物を重ね合わせ、物語に深く引き込まれました。
『傲慢と善良』は、恋愛や結婚を描きながらも、私たちがどう生きるべきかを考えさせてくれる作品です。
ぜひこの本を読んで、自分の中にある「善良さ」と「傲慢さ」に向き合ってみてください。自分自身の生き方を見つめ直すきっかけになりますよ。
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また、『傲慢と善良』の次に読む辻村作品に悩まれているならば、『島はぼくらと(本屋大賞)』と『青空と逃げる』をオススメします。
『島はぼくらと(本屋大賞)』では、真実視点のパートに登場する地域活性デザイナーの谷川ヨシノと出会えるし『青空と逃げる』は、やはり真実視点のパートに登場する早苗・力親子が主人公の物語です。
実は、私自身も婚活アプリを使ったことがあります。初めは不安でしたが、自分の意思で行動することの大切さを学び、婚活アプリで出会った人と結婚することができました。
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