東北に行く途中の道の駅で、環(たまき)にサダイジン(黒い猫)が入り込み、すずめに本音を言うシーンがあります。
サダイジンが環に乗り移って、本音を吐き出させたのは、環とすずめの関係をよくするためだったと考えられますが、私は映画と小説を読んで違う理由があるのではないかと思いました。
このブログでは、ダイジンとサダイジン、すずめと環(たまき)に焦点を当て、サダイジンが環のからだを乗っ取った(憑依)目的は何なのか?について考察していきます。
サダイジン(東の要石)が抜けた理由は?
ダイジンは元々要石の中で封印されていた神様で、主人公のすずめによって封印が解かれた後に白い仔猫の姿となります。
一方、サダイジンは、九州に祀られていたダイジンと対をなす「東の要石」としての役割を持ち、東京都千代田区の皇居の地下深くで祀られていました。
この2つの要石によって災いを抑えていたのですが、九州の要石であるダイジンが封印から解かれたことで、サダイジンは災いを一人で抑えることが困難になり、要石は抜けてしまったのではないかと思います。
そのことを示す場面があります。
芹澤(せりざわ)が草太の部屋に来て、すずめと話している時に「地震速報」が流れミミズが現れるシーンがあります。
小説版では、下記のように表現され、それが大きな地震だったことがわかります。
地面が、大きく縦に弾んだ。私はその勢いで数センチも宙に浮き、バランスを崩して地面に膝をつく。スマホの画面には赤と黄色の文字で「緊急地震速報・関東内陸・強い揺れに備えてください」と表示されている。
引用元 すずめの戸締まり 新海誠 KADOKAWA
小説版では、その地震の後に、草太が「抜けたんだ、2つめの要石が!」と言います。
このことから、ひとつめの要石がダイジンであり、2つめの要石がサダイジンであること、また、サダイジンはダイジンが要石ではなくなったため、サダイジン一人で災いを抑えることが困難になり、サダイジン(要石)が抜けてしまったという流れになっていると考えられます。
そのあと草太は、ダイジンの術で草太がイスに変えられた時に「要石としての役割」もダイジンから草太へと移されてしまっていることを知ることになります。
そして、巨大なミミズを抑えるために、すずめは要石になった草太を、泣く泣く、体に残った力の全部を絞ってミミズに刺すのです。
なぜ、東北に行く道の駅だったのか?
要石になった草太を助けるために、すずめは後ろ戸のある東北に向かいます。
東北に向かう途中、道の駅に寄ります。
ここで、サダイジンが環に取り付く(憑依)のですが、全体のあらすじから考えて、「なぜこの場面で環に憑依する必要があったのだろうか?」と不思議に思いました。
サダイジンとすずめの関連については、草太の祖父である宗像羊郎(むなかたひつじろう)の病室を訪れたサダイジンに対して、宗像が、「あの子について行かれますかな。よろしくお頼み申す」と話しかけています。このことから、サダイジンが、すずめを追いかけることが示されています。
また、東京駅で、すずめと環が言い争うシーンがありますが、なんならサダイジンは、この時に環に憑依しても良いはずですし、途中、地震があった時に、芹澤(せりざわ)とすずめは車を降りますが、その時でも良かったはずです。でもなぜ、この道の駅だったのか??
東日本大震災で母親を失ったすずめは、そこに行けば何か解決の糸口が見つかるという強い信念を持って、東北路をひた走ります。
ですが、要石となってしまった草太を探すために現れた友人、芹澤の愛車であるオープンカーの屋根は故障しており、振り出した雨で芹澤と環は濡れる羽目になります。冷えた体を乾かすために休憩した道の駅で、その事件は起こります。
道の駅の駐車場で、車に残ったすずめのスマホが振動し「緊急地震速報」が表示され地震が発生しますが、やがて揺れは小さくなり、すずめは「草太が要石となりミミズを抑えてくれている」と直感的に理解します。
そして、草太のことを想いすずめはシャツの中の鍵を握りしめます。
この後に、サダイジンが現れるのですが、その際に、環に憑依したカタチで現れるのです。
憑依された環は、すずめとの言い争いの中で、今まで東日本大震災で亡くなったすずめの母親代わりを務めてきた自分の心の奥底にあったどろどろとした思いを吐露することになります。
このシーンは、誰の目にも、自分のことよりも姉の遺児であるすずめのことを気にかけて生きて来た女性であるそれまでの環とはあまりにも異なる印象を与えるので、物語を見ている私たち読者にも、もちろんすずめにとっても、非常にショッキングなシーンとなっています。
しかしながら、このどろどろとした環の発言全てが、環の本心ではないことが小説版では表現されています。
半笑いの声で環さんが言う。…(中略)…環さんの口の端が笑っている…(中略)…それなのに環さんの目は泣いている。違う(注:環さんじゃない)!とその瞬間に私(すずめ)は思う。
引用元 すずめの戸締まり 新海誠 KADOKAWA
これは、私の考察ですが、九州で要石だったダイジンが白い仔猫の姿で現れる前に、すずめと接触しています。
同じように、要石となった神様が、現世に出て人間に見える姿となるためには、人間と接触しなければならないのかもしれません。
サダイジンもダイジンのように環の体に入ることで、黒猫という仮の姿に変わることができたのではないか、と思います。
それから、私は、サダイジンとダイジンが、要石となる前は、元々は親子だったのではないかと考察しています。
⇩詳しくはこちらに書いています。
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サダイジン(黒猫)とダイジン(白猫)は、環(たまき)とすずめの関係と同じ!?
サダイジンに取り付かれてしまった環は、自分の心にしまっていた想いを吐露させられることになります。
つまり、この場面では「環とすずめ」、「サダイジンとダイジン」という2組の親子の争いが表現されているのではないか、と私は思います。
そこで、ダイジンとサダイジンが親子ならば、環とすずめの言い争いは、ダイジンとサダイジンの言い争いなのかもしれない、そう思ってセリフを置き換えて考えてみました。
環「ねぇ、鈴芽(すずめ)」
サダイジン「ねぇ、ダイジン」
環「なして、そんげ実家に行きたいと?」
サダイジン「どうして、要石がいやなの?」
環「あんた、こんげに人様に迷惑かけちょっとに」
サダイジン「あなた、こんなに迷惑をかけてるのよ」
すずめ「話しても分からないことだから、環さんには」
ダイジン「話しても分からないことだから、サダイジンには」
環「帰るわよ。バスがあるから」
サダイジン「戻るわよ。要石に」
すずめ「離してよ!」
ダイジン「いやだよ!」
環「あんた分らんと!?私がどんげ心配してきたか!」
サダイジン「あなたわからないの?私がどれだけ心配してきたか!」
すずめ「それが私には重いの!」
ダイジン「それが私には重いの!」
環「もう私、しんどいわ…」
サダイジン「もう私、つかれたわ…」
すずめ「私だって、いたくて一緒にいたんじゃない」
ダイジン「私だって、要石になりたくてなったんじゃない」
環「私の人生返しんさい!」
サダイジン「私の人生返して!」
ダイジンがサダイジンに本当は要石になんてなりたくなかった、そんな気持ちをすずめを通して、サダイジンに話していたとしたら?
ダイジンが要石として、親であるサダイジンとともに人柱として生贄にささげられた8歳の子どもだとしたら?
草太の祖父、宗像羊朗(むなかたひつじろう)は「草太はこれから何十年もかけ、神を宿した要石になっていく。あなたには分らんだろうが、それは人の身には望み得ぬほどの誉(ほま)れなのだよ。草太は不出来な弟子(でし)だったが、そうか、最後に覚悟を示したか…」と言っていました。
しかし、草太は要石になる時「今まで気づかなかった、気づきたくなかった。ああ…これで終わりか…こんなところで…」と言っています。
22歳の草太でも、自分の意志ではなく、無念のまま要石になっています。
ダイジンは8歳で訳もわからず、人柱として生贄にささげられ要石になったのだとしたら…悲しい物語ですよね。
しかし、サダイジンは「何十年もかけ、神を宿した要石になり。自分が人の身には望み得ぬほどの誉(ほま)れ」であることを自覚して「あなたは私の子どもで立派な要石です。人の身には望み得ぬほどの誉(ほま)れなのですよ」と諭したとすれば?
環とすずめが言い争いをした後、ダイジンはサダイジンに飛びかかり、サダイジンは女の悲鳴のような高い声を上げ、2匹は揉み合います。
2匹がケンカしている時、環は吊っていたいた糸がぷつんと切れたかのように、地面に倒れてしまいます。
すずめが、2匹の悲鳴が途切れていることに気づいた時、ダイジンはサダイジンに首根っこをくわえられ、サダイジンの顔の下で、左右に揺れています。
小説には‘’まるで親猫と仔猫だった。2匹は車の座席の上でくっつくように丸くなっていた。ひと仕事おえたといわんばかりに、ごろごろと喉(のど)を鳴らして眠り込もうとしている‘’と表現されています。
猫が喉を鳴らすのは「今、幸せだよ」「安心しているよ」というメッセージを伝えるためのもので、信頼関係の表れでもあります。
そして、小説に‘’この猫たちの瞳は、あちら側の世界を見つめていた。‘’と書かれています。
このことから、ダイジンは要石として戻る決意をしたのではないでしょうか?
まとめ|ダイジンが要石として戻る決意をさせるためだった
自転車で実家に行く時に、小説には‘’環さんは、あっはっはと聞こえる声で、気持ちよさそうにひとしきり笑う。私もくすくすと笑ってしまう。もしかしたら私たちが一緒に笑うために、サダイジンはあの場にでてきたのかな。‘’と書かれています。
サダイジンは環に入り込むことで、本音を吐き出させ環とすずめの関係をよくするとともに、ダイジンを諭して要石として戻る決意をさせるためだったのではないでしょうか。
引用した上のシーン、本音でぶつかり合った2組の親子が、ひとつの画面でそれぞれ仲良く納まっています。とてもほのぼのとした良いカットだなぁ、と私には思えます。
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