誰もがその名前を耳にしたことがある、漫画の神様と言われる手塚治虫(てづかおさむ:1927~1989)さんには、「鉄腕アトム」(1952~1968)に始まり、「ブラック・ジャック」「三つ目がとおる」「ブッダ」、晩年には「火の鳥」「陽だまりの樹」「アドルフに告ぐ」など、たくさんの有名な作品があります。
また、幕末維新の時代を題材として好む作家は多く、歴史小説家である司馬遼太郎(じばりょうたろう:1923~1996)さんが、西郷隆盛・大久保利通にスポットを当てた作品「翔ぶが如く」(1975)、同じく坂本龍馬にスポットを当てた作品「竜馬がゆく」(1963)、そして土方歳三ら新選組にスポットを当てた作品「燃えよ剣」(1964)などは有名で、何度となく実写ドラマ化や映画化もされています。
もちろん、幕末維新の時代の作品の漫画やアニメは、数多くありますが、冒頭にご紹介した「漫画の神様」と言われる手塚治虫さんが、幕末維新の時代を題材とした漫画を描いていることは、ご存じでしょうか?
それが手塚治虫さんの「新選組」(1963)です。
冒頭のイラストでは、きりりっ、とした美少年が新選組のトレードマークであるダンダラ模様(ギザギザの山形)の羽織を着用しています。刀を手にした片膝立ての姿は、静から動に移る瞬間のようにも見え、手塚治虫さんらしい躍動感にあふれています。
この知る人ぞ知る手塚治虫さんの「新選組」が、この2024年4月からテレビ朝日で毎週水曜日の深夜に「君とゆきて咲く ~新選組青春録~」として実写ドラマ化されます。
テレビ朝日の深夜ドラマ枠と言えば、これまた知る人ぞ知る、のちに映画化されるような当たり作品を輩出した枠ですし、私としては期待が高まります。
そんな、実写ドラマ化される手塚治虫さんの「新選組」、いったいどんな作品なのか、簡単にご紹介をしたいと思います。
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その原作漫画「新選組」、文庫本1冊の分量であり、とても簡単に読破することができます。漫画の神様である手塚治虫さんの作品の入門編としてもオススメです。
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手塚治虫「新選組」ネタバレ
あらすじ
幕末の京都、父一人子一人の貧乏武士の家に手負いの男が逃げ込みます。事情は分からないながらも武士の情けでかくまった父は、追手の土佐藩士に切り殺されてしまいました。
下手人の男・庄内半蔵を、息子――深草丘十郎は「父の仇」とし、剣の腕を磨き、いつか仇討ちを果たすため、「新選組」に入隊します。入隊試験の際に知り合った、同じ年ごろの少年・鎌切大作は若いながらに桂小五郎を思わせる神道無念流の使い手です。入隊志望のならず者と斬りあいをしたあと、涼しい顔でまんじゅうを食べる得体のしれない少年ですが、年の近い丘十郎とは気が合い、二人は親友になります。
敵討ちを目的に新選組に入隊した深草丘十郎ですが、局長の命令で人を斬ったり、敵討ちを果たすうちに、人を殺めることのむなしさに気づき、苦悩するようになります。一方、新選組局長の芹沢鴨は、徐々に権勢をかさに着て、横暴を働くようになり……
架空の少年隊士二人を主人公にし、実在の歴史上の人物たちと入り乱れて展開する手塚治虫流「新選組」物語です。
引用元 tezukaosamu OFFICIALサイト
作品について
「新選組」※1963/01-10「少年ブック」(集英社)連載
江戸末期に「尊王攘夷」を掲げ、維新勢力の要人の暗殺などに暗躍した新選組については、現代では時代劇の人気のテーマの一つですが、この手塚治虫の「新選組」の時代には隊士たちのキャラクターも固定したイメージもなく、今ほど人気もありませんでした。
とはいえまったく見向きもされなかったわけではなく、古くは1928年の子母澤寛の小説「新選組始末記」で再評価され、この漫画「新選組」とほぼ同時期には司馬遼太郎による「新選組血風録」と「燃えよ剣」が連載され、現代のマンガや小説での隊士たちのイメージの多くは、このふたつの小説に影響を受けているといわれます。
大人の間では小説や映画(市川雷蔵が主演を務め、山崎烝を演じた「新選組始末記」などはまさに1963年公開の映画です)などで、先に新選組のブームはあったのですが、子供漫画の世界にはまだ影響を与えていなかったのかもしれません。
手塚治虫は手塚治虫漫画全集「新選組」のあとがきのなかで、「まだ新選組や沖田総司が、現在ほどブームになる以前、まだ勤王の志士から見れば悪役然としていたころ」と回想しています。実際本作はあまり人気が良くなかったようで、本当は五稜郭までを描く構想があったにも関わらず、池田屋事件で終わっています。
近藤勇や土方歳三、名字だけのわき役風の登場ではありますが、斎藤一、永倉新八、山崎烝らの隊士たち、また坂本龍馬や桂小五郎などの「維新派」の重要人物など、実在の人物の名前も端々に登場し、力士たちと隊士とのけんかや、桝屋喜右衛門の拷問のくだりなどは、他資料にも登場する有名なエピソードです。
先に引用したあとがきでも手塚は「いたってフィクショナル」「異次元の世界の新選組物語」と述懐していますが、時代考証的な硬いことは考えなくとも、幕末の二人の少年の出会いと別れのドラマとして、多くのファンを引き付ける作品です。
引用元 tezukaosamu OFFICIALサイト
新選組を読んだ感想・ネタバレ
引用したオフィシャルサイトの作品解説にもあるとおり、少年漫画として描かれた手塚治虫さんの「新選組」ですが、出版された1963年(昭和38年)時点では、今のように新選組に対する歴史的なイメージが確立されていなかった、つまり今ほどメジャーな題材ではなかったこともあり、あまり人気が出なかったそうです。
そのため、作品も、新選組の終焉の地である北海道の五稜郭の戦い(1868~1869)まで描く構想もあったようですが、結局、新選組の本拠地である京都から飛び出すこともなく、池田屋事件(1864)のところで終わってしまっています。
この単行本は、文庫本1冊で終わっていてたいへん手軽に読めるのですが、新選組の今後の流れを知っている者からすると、「あれっ!?ここで終わるの?」と唐突に終わる印象は、実際に否めません。
また、歴史好きで幕末好きの人なら理解していただけると思いますが、幕末維新の時代を扱った作品は、司馬遼太郎さんの作品だけでも軽く5~6作品はあると思います。
幕府か、長州か、薩摩か、土佐か、どの立場から誰にスポットを当てても作品が成立するような激動の時代であり、誰を主役にしてもおかしくないような実在の人物のドラマチックなエピソードがたくさんあります。
新選組ひとつを題材にしてみても、芹沢鴨、近藤勇、土方歳三、沖田総司ら超有名人以外にも、今であれば、ドラマの題材となるような史実上の隊士はたくさんいます。
そんな中で、架空の少年を2人も登場させて新選組のなかで大立ち回りを演じさせるという設定は、現代的な視点(歴史マニアの目が肥えてしまっているという意味で)からすれば、「ちょっと無理があるかなぁ…」という気がします。
では、だからといって、この作品は失敗だったのでしょうか?オフィシャルサイトの解説にもあるように、実際に途中打ち切りとなっている訳ですから、商業的には失敗だったのだろうと思います。
しかし、私の読後の印象としては、かえって池田屋事件で終わってしまうからこそ、今にも通用する歴史的真実の中にあったかもしれない、ひとつのファンタジーとして復活できるのではないかと感じています。
歴史考証好きの人も、新選組のなかで、誰かのこういう人生があったかもしれない…そういう気持ちで見てもらえたら純粋に楽しめると思います。
では、少しだけ、どういう登場人物で、どういう話が展開されるのか、ご紹介しましょう。
登場人物
- 深草丘十郎(架空) - 主人公
- 鎌切大作(架空) - 友達。共に新撰組に入る
- 近藤勇 - 深草を助け、入隊をすすめる
- 芹沢鴨-悪役として描かれる
- 坂本竜馬-丘十郎に敵討を止めるように話す
- 沖田総司-達人
- 松永主計-丘十郎に討たれる
- 八重-松永主計の娘
- 仏南無之介 - 松永の友人。長州の浪人。丘十郎を狙う。
- 内山彦次郎 - 与力。芹沢に斬られる。
- 庄内半蔵 - 土佐藩。丘十郎の父を斬った。仇
実際に手塚治虫「新選組」の絵を見てみよう!
物語は、幕末の京都、父一人子一人の貧乏武士の家に手負いの男が逃げ込むところから始まります。事情は分からないながらも武士の情けでかくまった父は、追手の土佐藩士に切り殺されてしまいました。
目の前で父親を殺された主人公、深草丘十郎(架空の少年)の前に、新選組近藤勇が現れ土佐藩士を切ってしまいます。そして丘十郎に「身寄りがなければ、私のところへたずねてきなさい」と言います。
丘十郎は下手人の男・庄内半蔵を「父の仇」とし、近藤勇の誘いを受け、剣の腕を磨き、いつか仇討ちを果たすため「新選組」に入隊します。
「新選組」の入隊試験の際に知り合った、同じ歳ごろの少年・鎌切大作は若いながらに桂小五郎を思わせる神道無念流の使い手でした。入隊志望のならず者と斬りあいをしたあと、涼しい顔でまんじゅうを食べる得体のしれない少年ですが、年歳の近い丘十郎とは気が合い、二人は親友になります。
剣の腕前はすごいのに、まんじゅうが好きだったり、おしるこを20杯も食べたり、その理由がタダになるからだったり、少年らしくてかわいいんですよ。
鎌切大作の助けもあって深草丘十郎は、メキメキ剣の腕前を上げていきますが、裏切り者の隊士を斬ったらその娘から逆に仇として幾度となく狙われたり、父の仇を討ったら長州藩から狙われたりと。自分が強くなっていくにつれ、仇討ちのむなしさに気づき、殺し合うことの苦しみを抱えることになっていきます。
鎌切大作の正体は?
そして、最後…主人公の丘十郎は、親友の鎌切大作は決闘をしなければならなくなります。大作は長州藩のスパイだったのです…。
あんなにおいしそうに2人でおしるこを食べたり、丘十郎がピンチの時に大作は必ず助けてくれた親友を超えて、戦友だったのに…。
大好きな親友を斬れと命令されて、丘十郎は悩みます。
幕末というのは、大切なものを両方とも持っていることが許されず、理不尽にも大事な親友を斬れと命令される。
もちろん、丘十郎は大好きな親友を斬りたくない。大作のほうも同じで、丘十郎との友情を感じながらも、やはり長州藩のスパイとしての仕事をしなければならない。それができないのが当時の世の中というのが本当につらくて胸が苦しくなります。
2人の決闘はどうなるのでしょうか!?…といったあらすじです。
いかがでしたか?実際の紙面も、引用して紹介させていただきましたが、漫画のコマ割りやアングルは、まるで絵コンテのようで、素人の私でも、実写化した時のイメージが活き活きと湧いてくる気がします。
躍動感がスゴイ!
特に、手塚治虫さんは、漫画家・アニメーターの始祖として、生涯でさまざまなジャンルの作品を描きましたが、医学博士(つまりお医者さまの国家資格を持っている)であるという知性的なポテンシャルの高さだけではなく、人文・社会・自然科学のさまざまな分野に関する知識の豊富さ、東洋西洋の古典文学など文芸作品や映画表現に関する造詣の深さにも定評があり、手塚さんの作品に反映されています。
つまり、手塚さんの作品は、すでに彼の頭の中で映像化されたものを紙面で再現しているようなものであり、私たち読者は漫画でありながらも、手塚さんの驚異的な画力・表現力によって動画を見ているような効果を受けてしまうのではないかと思います。
そういった意味では、この作品のドラマ化・映像化には期待が持てますし、ぜひ4月からのドラマだけでなく、原作漫画「新選組」も見ていただきたいと思います。
手塚治虫の「新選組」を無料で読む方法
その原作漫画「新選組」、文庫本1冊の分量であり、とても簡単に読破することができます。漫画の神様である手塚治虫さんの作品の入門編としてもオススメです。
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